神様との距離

 吉祥寺美術館で開催されている森山大道氏の写真展「モノクローム」に行ってきた。12月は大変仕事が忙しく、今日も祝日なのだけど出勤して作業をした。その後に森山さんの写真展はどうしても行きたかったので、家に帰って休みたかったのだけど会社から吉祥寺へ。美術館は小さいところだし、写真展に展示してある写真も見たことある作品が多かった。それでもやっぱり森山さんの写真はカッコよくて、色っぽかった。

 写真展に小柄な老人が居て、写真を不思議な距離感で見ていてなんだろなと思って顔を覗いてみたら、森山大道さんご本人だった。初めて近くで森山さんを見て、なんだかすごく体が熱くなった。思わず握手してもらおうかと思ったのだけど、なんて声をかけていいか分からず、ただ眺めるだけ。会場の人は誰も本人が来ていることは分からないみたいで声をかける人は居なかった。

 ぼんやり目の前に居る森山さん本人を見ていたら、すごく長い時間が経っていて、あれこれ考えたのだけど結局、声をかけずに帰ることにした。勇気もないし情けないのだけど、5メートル前にいる森山さんに今は話しかけることも出来ないのが、自分なのかと。自分にとって神様みたいな存在との距離は、触れるほど近くに居てもとてつもなく遠い。話しかけてもする話もないし、森山さんからすればきっと話しかけてくる若者は掃いて捨てるほど居るだろう。だからいつか、もっと何か誇れるものを成し遂げた時、その時にまた出会うことが出来たら、次は勇気を出して話しかけようと思う。その時は今日の話もしよう。

 会場を後にする時、胸にしまっていたカメラを出して、一枚だけ森山さんを撮った。小さく写っている神様みたいな存在に少しでも近づいていけるよう、写真を撮り続ける。

 

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